甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「おまえ、保健室戻っとけよ。休み時間終わるし」
「ああ、うん。ハル兄は?」
「俺は、次空き時間だから学習室に戻る」
「ふーん。気分悪くなったらいつでも診るから保健室に……」
「おまえなんかに看病されたくねぇよ」
わざと憎まれ口を言うと、瞬は口を尖らせてから背中を向けた。
白衣で包まれた瞬の背中が、俺よりも大きく見える。
その背中を眺めているうちに岡田の事が頭を過ぎって、廊下の先にもう一度視線を移した。
だけど、行きかう生徒の中に、もう市川と岡田の姿は確認できなかった。
こんな事で嫉妬する必要なんてどこにもない。
市川に岡田への想いがないのは一目瞭然だし、
第一、市川は俺がいるのに誰かになびくような女じゃない。
不器用なくらいに、度が過ぎるくらいに一途だって事も、俺が一番よく知ってる。
なのにこんな気持ちになるのは―――……。