甘い魔法②―先生とあたしの恋―
純粋な凶器
「矢野先生」
5時間目が始まって静まり返った廊下。
学習室に向かっていると、後ろから声をかけられた。
「馬場先生……どうかしましたか?」
振り向いた先にいた馬場先生の姿に、表情を崩さないようにして答える。
こないだの飲み会の時、馬場先生が俺の事をまだ少なからず想ってる事を確信して、それ以降距離を開けるようにしてたのに。
思いがけない向こうからの接触には、正直面倒くさいって思いが浮かんだ。
「あの、生徒の間で広まってる噂ですとか……こないだ坂口先生が言ってた事なんですけど……」
「その事でしたら、本気に捕らえていないですから。大丈夫ですよ」
赤くなってもじもじと俯く馬場先生。
言葉を切るように笑顔で答えた。
本気に捕らえてないっていうのは嘘だったけど、ここは生徒や瞬の勝手な勘違いって事にしといた方がやりやすい。
「そうじゃなくて……そのっ」
「教員同士の恋愛って、俺の中じゃありえませんし。……本当に気にしないで下さい」