甘い魔法②―先生とあたしの恋―
それができない俺は、自分の事ばかりを考えてるから?
市川の未来なんかより、今の自分の感情を優先してるから?
俺の想い方が、
間違ってるから―――……?
数学なんかよりもよっぽど難しい問題を前に、俺の思考が答えを見つけ出す事は不可能に見えた。
きっと、無意識に答えから目を逸らすから。
高遠の背中を軽く叩いてから、止まっていた足を進める。
そして一番近くの角を曲がった時、一人の生徒の姿が目に映った。
それは、普段は使われない屋上へと続く階段に座り込んでいる、澤田の姿。
今は授業中だ。
こんなとこでサボってる澤田を注意するべきなのは分かってる。
だけど……澤田の表情に、そんな気にはなれなかった。
澤田が俺のところに入り浸るほど相談してる恋の相手は……誰でもない、小林だから。