甘い魔法②―先生とあたしの恋―
やっと着いた数学学習室。
誰もいないそこでため息を落としてから、授業内容をまとめたノートに目を通そうとした時、学習室のドアが開けられた。
「おまえっ……ふざけんな、教室戻れよ! 俺が怒られるだろぉが!」
「よく言うよ。さっきは注意もしなかったくせに」
「おまえが廊下うろついてる分には構わねぇけど、ここにいられると困るんだよ。
教師の俺が注意されんだから。どっか行け」
俺の一喝なんて気にしない顔でドアを閉めたのは……、澤田。
やっぱりさっき授業に出るように注意しとけばよかった。
澤田が浮かない顔なんか向けてくるから、仕方なく他の数学教師の授業予定表を確認する。
運よく俺以外は授業が入ってる事に安心してから、澤田への注意を諦めて、広げたノートに視線を落とした。
「なぁ……矢野センは好きな奴のためなら自分の気持ち隠す?
相手の幸せのためなら自分の気持ちを殺せる?」
突然聞かれて、やっぱりさっきの会話を聞かれてたんだと確信する。
授業をさぼっているような奴の恋愛相談になんか乗る義理もないけど……。
澤田の真剣な表情に根負けして、呆れ笑いしてから答える。