甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「俺には無理かな。
無理だけど……限界まで追い詰められて、それが俺と別れる事で解決されるなら……。
相手がそれを望むなら……、いや。でも無理だ。
やっぱり無理」
大人らしく、教師らしく答えようとしたのに。
結局それは失敗に終わる。
『別れる』なんて。
声にしただけで、気持ちがこれでもかってほど動揺する。
なんとか均衡を保っている主軸が大きく傾いて、黒い渦の中に落とされそうになる。
そんな俺の心の葛藤を知らない澤田は、俺の答えにぱっと顔色を明るくした。
「だよなっ! 俺も……片思いならまだしも、両思いだったら絶対別れない。
……相手が望まない限り」
「望まれたら別れんのかよ」
「いや、だってそれはさぁ……つぅか、相手が嫌がっても別れない矢野センのがおかしいって」
……そんなの、よく分かってるよ。
痛いところを突く澤田の言葉が、傷をえぐる。
純粋すぎる想いは、凶器になって俺を攻める。