甘い魔法②―先生とあたしの恋―
失えないから
【実姫SIDE】
「保健室に岡田と2人でいたって?」
寮に帰ってくるなりそんな事を言い出した先生。
あたしは夕食の炊き込みご飯を口に運びながら、保健室での事を思い出す。
そして、やっと出てきた岡田くんの顔に頷いた。
「あ、うん。岡田くんがサッカーかなんかしてて転んだって血まみれだったから。
坂口先生、先生のところに行ってていなかったから、そのまま放っとく訳にもいかなくて」
「ふーん……」
つまらなそうに呟いた先生に、答えを間違ったかなって不安になる。
最近の先生は色んな事に関してやけに過敏だから、正直に話さない方がよかったのかもしれない。
だけど、だからって嘘をつくなんて選択肢は、あたしには選べないし。
こういう時、秋穂ちゃんなら……ってどうしても考えてしまう。
秋穂ちゃんなら、先生が望んでいる言葉がすぐにかけられるのかもしれない。
秋穂ちゃんなら、先生が欲しいモノをすぐに与えられるのかもしれない。
そんな考えが、頭を過ぎる。