甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「今から『先生』禁止だからな」
「えっ……じゃあなんて呼ぶの? あ、『矢野』でいい?」
「……普通下の名前だろ」
「無理だよっ!」
「ちょっとは考えろよ。ハルキでもハルくんでも……」
「無理っ!! 気持ち悪いっ」
「おまえなー……」
ハルキだとかハルくんだとか……絶対無理だし。
名前を呼んでもいないのに、すっかり赤くなった頬を両手で隠す。
先生はそんなあたしに呆れたような笑みを零した。
「まぁ、いっか。矢野で。……市川はなんて呼んで欲しい?」
先生が意地悪な聞き方をしたせいで、答えにくい雰囲気が場を仕切る。
「別に……いつも通りでいいよ」
「は?」
「『市川』でいいよ」
あたしの答えに、先生は不機嫌そうに顔をしかめた。