甘い魔法②―先生とあたしの恋―
岡田くんが、制服のズボンを捲り上げてすねのあたりを見せてくるから、思わず笑う。
だけど、笑ってる場合じゃない事を思い出して、どうにかこの場を去ろうと考えていると、岡田くんの後ろにいる男子生徒に気付いた。
確か、数学学習室によくいる子で……。
『すっげぇ相談してきて本気でうざいんだよ、あいつ』って先生が言ってた子だ。
確か、名前は……。
「あれ……えっと、澤田くん、だっけ」
「あ、はい」
「えー! ちょっと待ってよー……。
俺忘れてて壱を覚えてるってショックなんですけどー」
「壱?」
「あ、こいつです。澤田壱耶っていうんで、通称、壱。っつぅか、マジでショック……」
「……」
澤田くんに話し掛ける事で、岡田くんとの会話から逃げようとしたのに。
なんだか嫌な雰囲気の事を言い出されて、思わず眉をしかめた。
隣で観察するように岡田くんを眺めていた諒子が、あたしの肩をぽんと叩いて岡田くんに笑顔を向ける。
「もしかして実姫狙ってる?
だったらやめた方がいいよ。手強い彼氏がいるから」