甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「名字で呼び合うって、どんな爽やかカップルだよ。不自然だろ」
「じゃあ……。じゃあ、先生……、矢野の好きでいいよ」
ぷいっとそっぽを向きながら不貞腐れて言う。
でも実際に不貞腐れてるわけじゃなくて……本当はただの照れ隠しだった。
先生に名前を呼ばれると思うだけで、異常なドキドキが胸を急かしていた。
目を逸らしてるのに、わざと顔を覗き込んでくる意地悪な先生の胸を押し返す。
口の端を上げて笑う先生は、この状況をきっと楽しんでるんだろうけど。
それを分かっていても、あたしに反撃の余裕なんてなかった。
「『実姫』?」
「……っ」
意地悪な顔つきとは違って、優しく呼びかけてきた先生に胸が跳ねる。
みんなに名前で呼ばれてるハズなのにまるで違って聞こえる甘い響きに、身体の奥がキュッと苦しくなった。