甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「どうって……別に普通なんじゃない? 担任でもないし、そんなに詳しく知らないよ」
「上司にいじめられたりしてないか?
あの先生はいい先生だと思うけど、頭の固い上司には気に入られないタイプだろう」
お蕎麦を食べていた箸を完全に置いてしまったお父さんに、苦笑いを浮かべる。
あまり広げたくない話題なのに。
気に入ってるのかな、先生の事……。
「前はそういうのあったみたい。
矢野先生って生い立ちに色々あるみたいで、それを教頭に言われてたって。あ、噂で聞いただけだけどね」
「……生い立ちなんて本人にはどうする事も出来ないような事でか。
随分と無神経な教師がいるんだな」
眉を潜めたお父さんに、あたしも頷いて……でも、明るく笑う。
「でもね、今はそんなに悪くない環境だと思うよ。
校長が矢野先生と知り合いみたいで、矢野先生に目をかけてるみたいだし。
それからいやがらせもなくなったみたい」
「そうか。ならよかった」