甘い魔法②―先生とあたしの恋―


本当に安心したように笑うお父さんを目の当たりにすると、やっぱり微妙な気持ちになる。

担任の事なんて一度も気にした事ないくせに、やけに先生の事は気にかけてるし。


出来れば知られたくない関係なのに……。

間接的にでも付き合ってる人の事を話すのは、微妙だ。


お父さんがやっと食べ始めたのを見て、あたしも箸を進める。


海老天にかき揚げにまいたけ。

他にもたくさん盛り付けられている天ぷらを見ると、お父さんが奮発した事が分かった。


その大半を食べ終わった時、食事を終えたお父さんが箸を置く。

そして、テーブルの上の一点を見つめた。


「……どうかした?」


食べ終わった器を重ね合わせながら聞くと、お父さんは少し緊張した様子で話しだした。


「実姫……。お母さんの事だけどな」


切り出された話題が、胸を瞬時に騒がせた。

半年くらい前にしたっきり、お父さんからもあたしからも出さなかった話題。


お父さんが緊張した顔をするから、あたしにまでそれが伝染してるみたいだった。



< 245 / 458 >

この作品をシェア

pagetop