甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「『実姫』って呼びたいとこだけど……万が一学校で呼んだりしたらまずいしな。
とりあえず、爽やかカップルでいくか」
こっちのドキドキなんか知らずに軽く言う先生。
半分がっかりしながらも、先生の言い分に納得して頷く。
「……そうだね」
「……がっかり?」
「べ、別にそんな事っ……」
「俺ははっきり言って、名前で呼びたいけど」
笑いながらそんな事を言い出した先生に、顔を上げる。
さっきまであたしをからかっていたハズの表情は、いつの間にか微かな微笑みを浮かべていた。
穏やかな風が、キャップから覗く先生の髪を揺らす。
「なんで……?」
「だって、清水も田宮もおまえの事呼び捨てだろ。
おまえも和馬とか啓太だとか呼んでるし」
「それは、和馬は幼馴染だし、それに……」
啓太の事だって、元彼なんだから仕方ない。
そう言おうとして、言葉を止める。
なんだか、先生を傷つけちゃうような気がして言いたくなかった。