甘い魔法②―先生とあたしの恋―
本当につらそうに言うから、首を振ってからなんとか笑顔を作る。
別に、お父さんに謝って欲しいわけじゃない。
もう何度も謝ってもらったし、責めてもいない。
「あたしは、寮に入った事であまり寂しさとか感じなくなったし、友達もいるから大丈夫。
でも、お父さんはずっとこの家にひとりだし、嫌だよね……」
仕事が忙しいから毎日は帰ってきてないかもしれないけど、それでもこの家でひとりで過ごしているんだと思うと、少し可哀想になる。
今まではそんな事感じなかったのに。
お父さんとの関係がだんだんとよくなってきてるのは自分でも分かってた。
けど、思わず口にしてしまったお父さんへの心配が、言ってから恥ずかしくなる。
お父さんは、微笑んで首を振る。
「いや。……まぁ、実姫やお母さんがいてくれれば嬉しいけど、でも自業自得だと思ってるから。
寂しさだとかを感じる度に、自分が家庭を顧みなかった事を思い出せて身が引き締まるしな」
「顧みなかったのは……それだけ仕事が忙しかったからでしょ? いいわけぐらいした方がいいよ。
お母さんも……、『お父さんは今大変な時期だから』ってよく言ってた。
昔は納得できなかったけど、でも今は少しぐらいなら分かるよ。
お父さんが仕事に一生懸命だったのも、ずっと疲れていたのも、分かる」