甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「お父さんから見るお母さんもそうだったよ。
今考えると、お父さんは、お母さんのそんな態度に甘えすぎてたんだって思う。
お母さんが、一人っ子でお嬢様育ちだったのは知ってるだろう?
なのに、結婚して慣れない家事や育児に追われて……大変だったろうな」
お母さんがお嬢様育ちだっていうのを知ったのは、小学校に上がった頃。
毎年遊びに行っていたおじいちゃんの家が、ハンパなく大きい事に気付いたのがその頃だった。
中学に入った頃、お母さんが何気なく話してくれた事は、今でも覚えてる。
『お母さんは何も知らない世間知らずだったから、
お父さんの妻としてきちんとやっていけるかとか、実姫の母親としてちゃんとできるかとか……常に不安だったの。
自分が甘やかされて育った事を知ってたから。
余計にしっかりしなくちゃって気持ちばかりが焦ってね、空回りばっかりだった。
だけどお父さんが「おまえなりに頑張ればそれでいいんだ」って言ってくれて……。
それから、少しだけ肩の力が抜けたの』
そう言っていたのは、確か中学1年の夏休み。