甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「もう、お母さんをこの家に縛り付けたりはしたくないんだ。
だから、お父さんが言うんじゃなくて、お母さんから帰る事を望んで欲しいと思ってる。
そうしないと……きっと、お父さんが今までしてきた生活が、お母さんの中でしこりになり続ける」
「……だけど、待ってたら大変じゃん」
「大丈夫だよ。もう歳だけど、体力はあるんだ。
お母さんが今までの事を整理できて、それでまたお父さんと生活してくれるって言ってくれるまで、気長に待つよ。
お母さんがそれを望んでくれるように、最善の努力はするつもりだ。
……つらい思いをさせてしまって、実姫には本当に申し訳ない……」
歪ませた表情を俯かせるお父さんは、まるで頭を下げてるみたいだった。
あたしは少し呆然とした頭を呼び戻して、首を振る。
「……ううん。あたしなら大丈夫。
だから……、あまり無理しないでね」
あたしの言葉に、お父さんは微笑んだ。