甘い魔法②―先生とあたしの恋―
【第五章】
返信
「本当に帰るのか? もう遅いし泊まっていけばいいじゃないか。
ここから学校に通うのも、そんなに時間はかからないだろう?」
玄関先で靴を履いている後ろから、お父さんが言う。
時間は21時。
別に課題も出てないし、こんなに急いで帰る必要もないんだけど……。
どうしても先生が心配で。
先生に負けず劣らず心配性な自分に呆れ笑いが漏れる。
「うん。でも、明日の朝ごはんいらないって言ってないし。
せっかく中村さんが用意してくれるのに悪いから」
振り向いて言うと、お父さんは少し納得いかなそうに表情をしかめていた。
ドアの向こうで、空を渡る飛行機の音がわずかに響く。
「じゃあね」
「ああ。またな」
笑顔を返してくれたお父さんに微笑んでから玄関を出た。
外に出ると、星空が広がっていて、秋の太陽はすっかり姿を消していた。
寮までの道を歩きながら、お父さんとの会話を思い出す。