甘い魔法②―先生とあたしの恋―
和馬の事はともかく。
啓太との事に関しては、敏感に反応するから。
そう思って口ごもったあたしに、先生が笑う。
「分かってるよ。別に名前の呼び方なんか関係ねぇし」
「でも気にしてるんでしょ?」
「別に。……でもなんか負けてる気がして気に入らねぇだけ」
不貞腐れて言う先生に、思わず笑みが零れる。
子供みたいな理由を嬉しく思いながら、まだ顔をしかめてる先生に笑いかけた。
「さて。早く行くよ。……矢野」
「あー……なんかすっげぇ振り出しに戻った気分」
「懐かしいよね。『矢野』って呼んでた時期が」
苦笑いを浮かべる先生の隣を歩きながら、新しい景色に目を向ける。
先生にとって、すごく大切な場所。
今から向かう場所に緊張を覚える胸を落ち着かせるために、周りばかりを眺めてた。