甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「あ、そうだ。
週番は……市川か。1時間目が始まる前に数学学習室に来るようにって、矢野先生から伝言だ。
問題集を取りに来て欲しいそうだ」
「えっ……あ、分かりました……」
担任が突然言ってきた言葉に動揺して、思わず驚きの声を上げる。
慌てて口を塞いでから頷くと、担任はそのまま教室を出て行った。
その姿を目で追ってから、後ろの席にいる諒子を勢いよく振り向いて小声で言う。
「代わってくれない?!」
「んー……でも矢野センは週番に頼んだんでしょ?
問題ないよ。むしろ頼まれていないあたしが行く方が変かも」
「……」
校内での接触はなるべく控えたいのに……。
だけど、考えてみれば確かに諒子の言う通りでもあるし。
あまりあからさまに避けても、それはそれで目立つのかもしれないし。
先生はきっと今日の週番があたしだって知らない。
本当に偶然……。
偶然なんだけど……状況が状況なだけに気が乗らない。