甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「矢野、『あの』ってどの?」
「……さぁ。まったく心当たりが」
「違うのよ、実姫ちゃん。あ、実姫ちゃんって呼んでもいいかしら?
その、ハルキくんは中学とか高校の時、ちょっとだけやんちゃだっただけで……」
「……やんちゃ」
「やんちゃっていうか……色んな女の子と付き合って短期間で別れたり……。
あ、でもね? 誰一人重なった期間はなかったの!
それに、いつもあちらさんが熱を上げてる感じで、ハルキくんの態度なんてそれはもう見てられないほど冷たくて……」
慌てふためきながら説明してくれる里子さんを見ていると、先生が「勘弁しろよ」と、片手でおでこのあたりを覆った。
「里子さん……ほとんど暴露してんだけど、わざと?」
苦笑いを漏らす先生に、里子さんは両手を顔の前で振る。
「そんな訳ないでしょっ!
実姫ちゃんにハルキくんが嫌われないようにってフォローしてるんじゃないっ!」
そこで一度言葉を切った里子さんが、あたしの表情をうかがうように見る。