甘い魔法②―先生とあたしの恋―


「なんですか? 話って」


職員室の一階上にある音楽学習室は、数学学習室とは同じ階にあるものの、隅と隅。

一度も入った事のない部屋に、居心地の悪さを感じた。


下校時間のとっくに過ぎた校舎内には、生徒の気配はあまり感じない。

その代わりに、校庭から部活の賑やかな掛け声が聞こえてきていた。


ドアを入ってすぐのところで足を止めた俺を、部屋中央にいる馬場先生が振り返る。

そして、じっと俺を見据えた。


「矢野先生、彼女がいらっしゃるって言ってましたよね」

「……言いましたけど」


やっぱりそういう話かと気が重くなる。

だから念のため釘を刺したのに……。

いい加減、馬場先生とのこういう話にも嫌気が差して、切り上げる言葉を探していた時。


馬場先生が続けた。


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