甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「え……」
「そんな事、本気で言ってるんでしょうか。……馬場先生」
静かに問い掛けると、馬場先生の表情に明らかな動揺が混ざる。
それは、教師としてまずい発言をした事になのか。
……それとも、個人的な恋愛感情からなのか。
どうやら後者だった馬場先生は、ぐっと歯を食いしばった後、俺を強い眼差しで見た。
「だってっ……あの子が相手だと、傷付くのは先生なんですよ?
生徒なんて、ありえませんっ……! それだったら……、」
「―――それだったら、貴方と付き合えって事ですか? 好きでもないのに?」
「……っ」
市川を悪く言う馬場先生が許せなくて、わざと傷つけるような事を言った。
それを聞いた馬場先生の瞳に、悲しみの色が浮かぶ。
自分の言葉のせいだっていうのに、慰めの言葉すら浮かばない。
そんな自分に、目の前の現実が音を立てて崩れていくのが見えたようだった。
市川にだけ固執する感情。
他の事に対して、あまりに起伏しない気持ち。
残酷なほどの感情が、ゆっくりと身体ん中で動き始める。