甘い魔法②―先生とあたしの恋―
だけど、馬場先生は意外にもすんなりそれを受け止めたようだった。
黙って俯かせた表情からは、怒りだとかそんな要素を含む感情は読み取れない。
もしかしたら、市川を偏見した発言を後悔してるのかもしれない。
感情が突っ走ってあんな発言をしたのか分からないけど、あまりにひどかったし、
なにより、馬場先生らしくなかったから。
「馬場先生。
傷つけた事は、本当に申し訳ないと思っています。
気持ちに応えられない事も……」
「……私なら、あの子ほど問題にはなりません。
それでも……」
「それでも。……市川以外、考えられないんです。
本当に情けないほど―――……」
「……」
黙った俺に、馬場先生も何も言おうとはしなかった。
それ以上、何も聞こうともしなかった。
静かな空間に、吹奏楽部の演奏だけが響いていた。