甘い魔法②―先生とあたしの恋―
狂気
「……呼び止めちゃってすみませんでした。
もう、十分分かりましたので」
しばらくしてからそう切り出した馬場先生。
その声は、やけに落ち着いて聞こえた。
視線を上げると、馬場先生は自分のデスクに手を付き、外の景色に目を向けていた。
「……そうですか」
「……バラさないで下さい、とは言わないんですね」
学習室を出ようと背中を向けると、馬場先生が呟くように言う。
その言葉に、俺は身体半分だけ振り返った。
「……もしバラすなら、俺が市川を襲ったって事にして下さい。
無理矢理の行為であって、あいつは嫌がって抵抗してたって。
実際、その通りですし」
「そうすれば、市川さんの処分はないだろうから?」
頷かずに微笑むと、馬場先生は面白くなさそうに口許を歪めた。