甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「あの時……、今朝の、その居合わせてしまった時。
矢野先生の様子がいつもと違って見えたんですけど……大丈夫ですか?」
本当に心配そうな表情の馬場先生。
答えられずに、微笑んで答えを誤魔化してから教室を出た。
……馬場先生の目には、きっと今の笑みは“大丈夫”って意味には取れなかったと思う。
俺自身、その問いに頷くなんて事はできない。
できないどころか―――……。
「あっ、矢野セン! すっげぇ探したじゃん」
ギリっと音がするほど奥歯を噛み締めていると、後ろから威勢のいい声で話しかけられた。
その声に、うんざりしながら振り向く。
「……なんだよ、澤田。また小林の相談か?」
「ちょっ!! ストップっ!!
誰かに聞かれたらどうすんだよっ」
「別にいいんじゃね? 大体おまえは分かりやすいから結構バレてると思うけど」
「やっぱそうなんかなー……」
……他人の相談になんか乗ってる場合じゃねぇのに。
澤田の沈んだ表情を見ると、なんでだか、仕方ねぇなって気になる。
父性……兄性本能?
そんなあるんだかないんだか分からない本能に、苦笑いを漏らした。