甘い魔法②―先生とあたしの恋―


「あの時……、今朝の、その居合わせてしまった時。

矢野先生の様子がいつもと違って見えたんですけど……大丈夫ですか?」


本当に心配そうな表情の馬場先生。

答えられずに、微笑んで答えを誤魔化してから教室を出た。


……馬場先生の目には、きっと今の笑みは“大丈夫”って意味には取れなかったと思う。


俺自身、その問いに頷くなんて事はできない。

できないどころか―――……。



「あっ、矢野セン! すっげぇ探したじゃん」


ギリっと音がするほど奥歯を噛み締めていると、後ろから威勢のいい声で話しかけられた。

その声に、うんざりしながら振り向く。


「……なんだよ、澤田。また小林の相談か?」

「ちょっ!! ストップっ!! 

誰かに聞かれたらどうすんだよっ」

「別にいいんじゃね? 大体おまえは分かりやすいから結構バレてると思うけど」

「やっぱそうなんかなー……」


……他人の相談になんか乗ってる場合じゃねぇのに。

澤田の沈んだ表情を見ると、なんでだか、仕方ねぇなって気になる。


父性……兄性本能?

そんなあるんだかないんだか分からない本能に、苦笑いを漏らした。






< 320 / 458 >

この作品をシェア

pagetop