甘い魔法②―先生とあたしの恋―
必死の思い
「あ、先生」
寮に帰ると、市川がすぐに駆け寄ってきた。
その様子に、内心ギクッとする。
ずっと胸ん中にある罪悪感から、表情が自然と険しくなる。
「あー……市川。朝の事は本当にごめん……」
市川は、一瞬疑問の表情を浮かべてから、口を尖らせた。
「あ、そうだった! 本当だよ。あんなの誰かに見られたら大変なんだからね!?
ちゃんと分かってる?!」
「……すみません」
「それに……岡田くんの事は本当にちゃんと断ったんだよ?
『大切な人がいるから』って、ちゃんと……」
明るく怒る市川に、なんでだかホっとして笑みが零れる。
わざと忘れた振りをする市川に、胸が熱くなるのを感じた。
こうして一緒にいれば、俺ん中にある狂暴な気持ちも、大人しく檻ん中に閉じこもっててくれるのに。
離れた途端に、不安と一緒になって暴れ出す感情。
それがいつか市川を傷つける気がして……、怖くて仕方ない。