甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「いや。行ってこいよ。
思い出作りも親孝行も大切な事だし」
市川を縛り付けたいって気持ちは、確かに存在する。
存在するし、俺の中でかなり大きな部分を占めてる。
だけど、同時に存在する、市川の幸せを願う感情。
その二つは、相対するモノなのに……。
同じ部分に確かに存在してる。
「でも、結構長いよ?」
「ああ」
「いいの?」
「ああ」
「……本当に?」
市川が心配するように何度も聞いてくるから、呆れて笑う。
何をそんなに心配しているのか分からないけど、今までないくらいに素直な表情をする市川に思わず笑みが漏れた。
「いいって言ってるだろ?
どうしたんだよ、なんか変だろ」
市川の頭を撫でた後、指を髪に差し込む。
俺の手の下で、市川は少しだけ頬を赤らめて目を伏せた。