甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「市川のお母さんってどんな人?」
キノコの炊き込みご飯を食べながら聞くと、市川は視線を宙に泳がせた後答える。
「お嬢様育ちだったらしいんだけど、それを気にしてか、いつも頑張ってるように見えたかな。
自分で言うのもおかしいけど、いいお母さんだったと思う。
仕事ばかりのお父さんを責めるどころか庇ってたし……、本当に頑張ってた」
そこで言葉を途切らせた市川の表情が、少しだけ曇る。
それは、今は離れてしまった母親に想いを馳せてるからなのか。
それとも母親の限界に気付けなかった自分を責めてるのか。
「だけど、お父さんもお父さんで、頑張ってたんだよね……。
忙しい中でも、あたしとお母さんの誕生日は絶対にプレゼントをくれてたし。
愛情表現とかが苦手なお父さんなりの優しさだったのに。
色々すれ違っちゃっただけなのに、難しいよね……」
珍しく落ち込んだ顔を見せるから、心配になって口を開こうとした俺に、顔をあげた市川が微笑みかける。