甘い魔法②―先生とあたしの恋―


「ねぇ、先生のお母さんはどんな人だったか覚えてる?」

「あー……ほとんど覚えてねぇけど。

でも、よく俺の顔見て、「おまえの顔見てると父親を思い出すから嫌だ」って言ってたけど。

俺んち、母子家庭だったから。

なんで父親がいなかったのかもよく分からないけど。

母親がそんな風に言ってたって事は、裏切られたんだろうけどな」

「……お母さん似だと思ってた」

「男は女親に似るって言うからな」

「そうじゃなくて……、先生が髪を茶色にしてるのって、お母さんに似てる自分の顔を少しでも変えたくてしてるのかと思ってたから……」


俺が思ってる以上に、俺の事を考えて気に掛けてくれている市川。

それは、いつも驚かされるほど。


まさか、髪の色からそんな風に考えてるなんて思いもしなかった。

気まずそうに言う市川を前に、苦笑いしながら答える。




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