甘い魔法②―先生とあたしの恋―


「うん。ハルくんも吉岡くらいに実姫に伝えられてれば、なんの問題もないのになって思ってさ。

言えば2人で解決できる問題になるけど、言わない事にはずっと1人でそれを抱えていかなくちゃになるじゃん。

実姫としては歩みよりもできないし。じれったいよね」


ふぅ、とため息まじりに言った諒子に、あたしも同じように息をつく。

あたしの心情を的確に言い当てた諒子に白旗を上げながら、先生の事を考える。


昨日だって……。

本当は、あたしが半月の間寮を離れるのを嫌だと思ったくせに、我慢して頷いたりしてたし。

別に先生が嫌だって言うなら、あたし行かないのに。

我慢なんかしなくていいのに。


『分かってる。……本当にごめんな』

悲しそうに目を細めた先生が思い出されて、口をキュっと結んだ。


北校舎の階段で、一瞬だけ垣間見た先生の感情も。

冷たく感じる体温も。


全部、『ごめんな』って言葉で、閉じ込められてるみたいだった。

謝られたのに、突き放された気分だった。


< 341 / 458 >

この作品をシェア

pagetop