甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「うん。ハルくんも吉岡くらいに実姫に伝えられてれば、なんの問題もないのになって思ってさ。
言えば2人で解決できる問題になるけど、言わない事にはずっと1人でそれを抱えていかなくちゃになるじゃん。
実姫としては歩みよりもできないし。じれったいよね」
ふぅ、とため息まじりに言った諒子に、あたしも同じように息をつく。
あたしの心情を的確に言い当てた諒子に白旗を上げながら、先生の事を考える。
昨日だって……。
本当は、あたしが半月の間寮を離れるのを嫌だと思ったくせに、我慢して頷いたりしてたし。
別に先生が嫌だって言うなら、あたし行かないのに。
我慢なんかしなくていいのに。
『分かってる。……本当にごめんな』
悲しそうに目を細めた先生が思い出されて、口をキュっと結んだ。
北校舎の階段で、一瞬だけ垣間見た先生の感情も。
冷たく感じる体温も。
全部、『ごめんな』って言葉で、閉じ込められてるみたいだった。
謝られたのに、突き放された気分だった。