甘い魔法②―先生とあたしの恋―


思わず口をつきそうになる不満。

だけど、口にすれば先生を追い詰める事が分かってるから。


先生のキズがどれほどのモノなのか、先生が自分から言ってくれない限り、分かってあげられないから。


だから、言えない。


『ここで育った人の事は、同じように経験をした人じゃなきゃ理解できないし、救えない。

ハルくんが落ち込んでる時、何て言葉を望んでるか、市川さんには分からないでしょ?』


秋穂ちゃんの言葉が浮かんで、唇を噛み締める。


悔しい気持ちとじれったい気持ちが、胸の奥で混ざり合ってイラだちに変わる。

自分の気持ちのジレンマに困惑する胸が、ざわざわしていて気持ち悪い。


カフェオレのパックから、水滴が机に落ちる。

じょじょに広がっていく小さな水溜りを眺めながら、先生に想いを馳せていた。



形にはなりえないのに、絶対に壊れないと思える先生への気持ち。

その中にある、一点のしこりが……気になって仕方ない。




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