甘い魔法②―先生とあたしの恋―


「……――― 」


立ち尽くしたようにも見える先生の姿。

ぼんやりとした目であたしを見る先生の表情に、胸が張り裂けそうになる。


先生の瞳には、今のこの光景がどう映ってるんだろう。

そればかりが気になって、しょうがなかった。


「……でも、迷惑だったならすみませんでした。

これからは気をつけます」


岡田くんがくるっと背中を向けて足を踏み出そうとした時。

立ち止まっていた先生も寮に向かって歩き出した。


「あれ、矢野センじゃん。どしたの? こんなとこで」


先生に気付いた岡田くんが、明るい声で話しかける。

けど、先生は……。


「別に。家に帰るだけ」

「え、家って?」


岡田くんの疑問に答える事なく、あたしと和馬の横を抜けて寮へと入った先生。

すぐに階段を上がり始めるから、その背中を追いかけたくなったけど……。


岡田くんの視線の手前、その衝動を我慢する。



< 352 / 458 >

この作品をシェア

pagetop