甘い魔法②―先生とあたしの恋―


「矢野センの家って……」


呆然と眺めていた岡田くんが呟く。

それを聞いて、和馬はあたしにアイコンタクトを送ってから岡田くんの元まで歩いて行った。


何かをぼそぼそ話してるのが聞こえてくる。

きっと、先生とあたしが同居してる事を口止めしてくれてるんだと思う。


しばらくして、岡田くんは納得していないようだったけど、寮に背中を向けて歩き出した。

それを少し見てから、和馬があたしの方へと駆け寄る。


「口止めしといたから心配すんなよ」

「なんか言ってた?」

「別に。ただ、そんな嫉妬深い彼氏がいるのに、他の男と同居なんかしてて大丈夫なのかって気にしてただけ」

「そっか……。

あ、とりあえず入って。ごめんね、立ち話になっちゃって」

「いや、俺が岡田連れてきたのが悪いんだし」

「あ、そっか」

「……少しは否定しろよ」


和馬の言葉に笑いながら食堂の椅子に座る。

だけど……、作った笑みはすぐにあたしの中から消え去っていく。


部屋に戻った先生が気になって仕方ない。

今、何を考えてる……?



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