甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「なぁ、なんかさー、おかしくねぇ? ハルくん」
「……ハルくんって、その呼び方、諒子に聞いたの?」
「そう。だけど、呼んでても誰かなんて本当に分からないし、いいあだ名だよな。
俺も最初誰かと思ったし」
「うん……」
あたしの返事に気持ちがこもってない事に気付いたのか、和馬は、小さなため息をついてから身体を乗り出す。
体重移動したせいで椅子がギシっと音を立てたから、あたしも落としていた視線を和馬に移した。
「何考えてんだか知らねぇけどさ、お互い溜め込むのはよくないだろ。
実姫もハルくんもさー、もっとわがままになっていいと思うけど」
眉間にシワを寄せながら真面目に言う和馬に、あたしも渋々口を開く。
頭の中でも、諒子とでも、十分過ぎるほど議論を重ねた議題だけに気が重い。
こんな事をいくら話してたって、当の先生が参加してくれない限り、きっと堂々巡りだって事が分かってるから。
……分かってて、先生の参加を義務にしたくないあたしのせいでもあるけど。