甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「珍しいね、先生……ビールとか」
そう話しかけながらテーブルに近づいて、でも座れずにいると、先生は新聞に落としていた視線をあたしに移す。
その瞳はどこか冷たくて、身体が勝手にすくむのが分かった。
何度か見た事のある、先生の瞳に映った、冷たくも深い感情。
「市川……こっちきて」
「え」
「こっち」
座ったままあたしを呼ぶ先生に、少しだけ戸惑いながらも近づく。
先生の様子がいつもと少し違うのは分かってた。
だけどそれを分かってたって、先生の呼びかけを無視するなんて選択肢はあたしにはないから。
先生の前まで来て足を止める。
じっと見つめてくる先生の瞳は、やっぱりおかしくて。
あたしの表情から何かを読み取ろうとしてるみたいだった。
先生が何を感じてるのかは分からないけど、あたしも目を逸らさずに先生を見つめ返す。