甘い魔法②―先生とあたしの恋―


「そうすれば市川も嫌な思いしなくて済むだろ?」

「嫌な思い……?」

「別に別れるって言ってるわけじゃねぇし。

ただ……、俺が冷静になるまで時間が欲しいだけ。

第一、おまえ受験生なんだから、情緒不安定な俺なんかに付き合ってたら大変だろ」


無理に笑顔を向ける先生。

先生の気持ちが分からなくて、あたしはきゅっと口の端を引き締めた。


一見、優しさにも聞こえる先生の言葉。

だけどそれは、まったく違う意味を持ってあたしの耳に届く。


それは……。


『自分一人で立ち直るから。

おまえは立ち入ってくるな』


そう、線引きされたみたいな気がした。

……初めて会った時みたいに。


あの時から……、

一年前から、先生とあたしの距離は縮まっていないの?


先生は、まだ、あたしと一線引きたいの?

詮索されたくないって、思ってるの―――?



ずっとムカムカしていた感情が、あたしの中から溢れ出す。




< 363 / 458 >

この作品をシェア

pagetop