甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「そうすれば市川も嫌な思いしなくて済むだろ?」
「嫌な思い……?」
「別に別れるって言ってるわけじゃねぇし。
ただ……、俺が冷静になるまで時間が欲しいだけ。
第一、おまえ受験生なんだから、情緒不安定な俺なんかに付き合ってたら大変だろ」
無理に笑顔を向ける先生。
先生の気持ちが分からなくて、あたしはきゅっと口の端を引き締めた。
一見、優しさにも聞こえる先生の言葉。
だけどそれは、まったく違う意味を持ってあたしの耳に届く。
それは……。
『自分一人で立ち直るから。
おまえは立ち入ってくるな』
そう、線引きされたみたいな気がした。
……初めて会った時みたいに。
あの時から……、
一年前から、先生とあたしの距離は縮まっていないの?
先生は、まだ、あたしと一線引きたいの?
詮索されたくないって、思ってるの―――?
ずっとムカムカしていた感情が、あたしの中から溢れ出す。