甘い魔法②―先生とあたしの恋―
『すぐ迎えにくるから』
そう残して消息を断ってしまった先生のお母さん。
それからずっと嘘に敏感な先生。
そんな先生に、あたしは一度嘘をついたから。
学校での先生の立場を、教師っていう立場を守りたくて……。
『別れたい』っていう、大きな嘘をついたから。
あの時は正しいと思った決断が、今になってあたしを責める。
「でも……、あたし、簡単に嘘をついたわけじゃないよ」
「分かってる。……ごめん、市川の事を言いたかったわけじゃねぇんだ」
先生が、くしゃっと自分の髪を触りながら微笑む。
なんとか笑ってる、そんな感じだった。
「ただ、俺は、そこまでして……、
自分の気持ちに嘘をついてまで、俺の事を想ってくれてる市川を疑う自分が許せないんだ。
市川が俺を裏切らないっていうのは、分かってる。
最近の市川が、俺を心配して気にかけて行動起こしてくれてんのも、気持ちを言葉にしてくれてんのも、気付いてた」
気まずそうに微笑む先生。
恥ずかしくなって、頬が熱を持つ。
今までの大胆行動の理由を気付かれてたなんて……。
やましい事じゃないし、それは気付かれたってあたしの気持ちの大きさを計るだけだし、かえっていいのかもしれないけど……。
……やっぱり恥ずかしい。