甘い魔法②―先生とあたしの恋―


「だから、つらいんだよ」


ぽつりと言われて、あたしは俯かせていた顔を上げる。

視界に入った先生は、本当につらそうに目を伏せていて……。


あたしを見ようとはしなかった。


「市川が、そんなに俺を想って頑張ってくれてんのに……。

なのに、どうでもいいような小さい事で不安になって、市川を疑って。挙句、校内であんな事……。

市川が許してくれたって、俺は許せない」

「せんせ……」

「許せるわけ、ないだろ……?

下手したら、おまえが泣くほどつらい思いして守ろうとしてくれた教職を、失うとこだった。

必死になって勉強してるおまえを……、学校で、指差される立場にするとこだった」


声が、出ない。

先生が、あまりにつらそうに言葉を絞り出すから。


つらい気持ちが流れ込んできて、声がでなかった。


「許されねぇよ……」


呟かれた言葉が、静かにあたしと先生の間に落ちる。

まるで、あたしと先生の間に見えない線を引くように。


一瞬にして膨れ上がってきた不安。

無意識に先生の服を掴んでいた。








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