甘い魔法②―先生とあたしの恋―
今だったら、まだ馬場先生だけで済んでる。
だけど……、余裕のない自分の気持ちは、もう無視する事なんてできない。
市川の言葉に甘えて今まで通りに過ごしたら、きっとどこかで綻びが出る。
そしてそれは、俺の懲戒免職なり、市川の停学、退学なりで表れる。
『俺がつらいんだ』
市川を納得させるためについた嘘が、胸を軋ませる。
俺が何よりつらいのは、市川と離れる事。
最悪のケースを実現させないために、一番つきたくない嘘をついた。
自分の一番強い気持ちを、偽った。
罪悪感と自己嫌悪。
普通に考えれば正しいハズの選択肢が、市川の泣きそうな表情を見ただけで揺らぐ。
誰よりも守りたい市川を傷つけたのは、間違いなく俺で。
その事実が、どこまでも俺を責める。
一年前。気持ちを偽って俺に別れを告げた時の市川の気持ちが、今初めて分かった気がした。
ひどくつらくて、それでも自分のせいだとしか思えない。
納得なんてできない気持ち。
本当の気持ちとの葛藤。