甘い魔法②―先生とあたしの恋―
『ほらみろ。だから言ったじゃん』
『だって、同じの買ったつもりだったんだもん』
『おまえ、飲んでて分からなかったのかよ』
『……コーヒーとか紅茶は何でも一緒にしか思わないし。
あたしは、誰かさんと違って神経質じゃないから、細かい味にはこだわらないんです』
憎まれ口を叩く記憶の中の市川に、口許が緩む。
だけど、目の前の里子さんに気付いて、すぐに表情を引き締めた。
……つもりだったのに。
目ざとい里子さんにそれをつつかれる。
「今すごく幸せそうにしてたのに、すぐ隠しちゃうんだから」
「……人がニヤけてんの見てたって楽しくないだろ」
「楽しくなくても、嬉しくはなるわよ」
「ああ、そっか。じゃなくちゃこんなボランティアみたいな職についてないもんな」
俺の言葉に、里子さんはにっこり笑って……「そうねぇ」なんて意味ありげに呟く。