甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「でも、ハルキくんだから余計に嬉しいのよ」
「は?」
「ここにいた時は、そんな風に何かを思い出して笑ったりした事なかったじゃない。
だから、今が幸せなのかなって思うと嬉しくなるの」
「……」
指摘されて改めて気付く、現状。
ここにいた時と比べれば、明らかに幸せなのに……。
それでも消えない過去。
どこまでも追ってくるそれは、まるで幸せを壊そうとしているようにさえ感じて。
いつの間にか眉を潜めていた。
「……俺って、幸せになっちゃいけないのかもな」
ぼそっと呟くと、それに気付いた里子さんが少しだけ黙る。
そして、カップの中の紅茶を見つめながら、静かに話し出した。
「“幸せになっちゃいけない人間なんて、いないのよ”
……そう答えて欲しい?」
困ったように微笑んだ里子さんが、俺と視線を合わせる。