甘い魔法②―先生とあたしの恋―
すらすらと、でも落ち着いた口調で話す里子さんの言葉を、黙ったまま聞いていた。
別に、“誰でも幸せになれる”なんて言葉を聞きたかったわけじゃない。
『俺って、幸せになっちゃいけないのかもな』
皮肉ってわけじゃないけど、軽い気持ちから出た言葉だった。
うまくいかない今の状態全部を運命だとかそんなモンのせいにしようとした、俺の汚さだった。
……けど、返ってきた答えは意外にも現実的なモノだったから、少し驚いていた。
与えられた環境の中で努力した人間がそれ相応の幸せを手にできるって話を、別に綺麗言だとは思わなかった。
むしろ……、厳しいくらいに、的を得てると思った。
頑張る事を放棄した人間は、幸せになる権利も放棄している。
里子さんの言った言葉が耳に痛いのは、どこか自分に当てはまる部分があるからかもしれない。
「ねぇ、ハルキくん」
「ん?」
そんな事を考えて顔をしかめていた俺を、里子さんが呼ぶ。
顔を上げると、微笑んだまま俺を見る里子さんと目が合った。