甘い魔法②―先生とあたしの恋―


―――なのに。

翌朝、7時に食堂に下りても、市川の姿はなかった。


朝食を持ってきた中村さんに聞けば、今朝の分はいらないとあらかじめ昨日の夜に言ってたらしい。


「……俺、なんかしたか?」


一人むなしく言った言葉には、思い当たる節が多すぎて……、ひとつには絞れない。


学校での無理矢理な行動。

数日前の距離を置くって発言。


今思い返せば、市川が俺の言葉を待っていた節がいくつも思い出せる。

それをことごとく無視してきた自分も、原因のひとつになる気がした。


今までこんな事がなかっただけに、動揺した気持ちが静まらない。


奮い立たせたハズの気持ちが、自信をなくしていく。


俺の分しか用意されていない食事を前に、何も考えられなかった。

まさか……。


そんな不安ばかりが頭を支配していて、心臓を急かしていた。





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