甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「先生、さっきから入らないで何してるの?」
そして、中から顔を出した市川に変な視線を送られる。
まだ制服のままの市川は、帰ってきたばかりなのかもしれない。
いつもだったらすぐに部屋着に着替えるのに。
「……なんで俺がいんのが分かったんだよ」
「先生の足音なら聞き分けられるもん。
……入らないの? 話があるんだけど」
市川から、こんな風に改めて話を切り出されるなんて初めてだった。
悪い方向にしかいかない考えに、嫌な緊張がプラスされる。
じっと、少しきつめに俺を見上げる市川の瞳。
多少の緊張が滲んでいるように見えた。
そんな市川の目を見ながら、覚悟を決めて寮に足を踏み入れる。
「……俺も話したい事があるんだ」
俺の後ろで寮のドアが静かに閉まる。
後ろ手に鍵を閉めてから、目の前の市川を見つめた。