甘い魔法②―先生とあたしの恋―


「情けねぇし、市川なら俺なんかよりいい奴見つけられるのも分かってる。

……でも、それでも俺、」

「先生、何言ってるの?」

「……は?」


市川の様子から、完全に別れ話だと推測した。

やけに真剣だったし、言いにくそうにしてたから。


だけど、市川は、本当に意味が分からないようだった。

顔をしかめて、首を傾げる市川を見て、俺も同じように眉を寄せる。


……別れ話じゃないのか?


「別れるなんてもう言わないって約束したの、忘れたの?」

「……いや、忘れてねぇけど、でも気持ちが変わったら」

「変わらないよ。

……そんな簡単な気持ちで先生を好きでいるんじゃないから」


そう言われて、渦巻いていた不安が消えていく。

最悪の事態も予想していただけに、気持ちが一気に軽くなる。


だけど、市川はまだ険しく難しい表情のままだった。


「じゃあ、なんだよ。……話って」


気になって聞くと、市川は少し黙る。

そして、カバンの中から一枚の紙を取り出した。



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