甘い魔法②―先生とあたしの恋―
カサカサと音を立てながら広げられる紙。
それに視線を落とす。
そして、その正体が分かった瞬間、勢いよく顔を上げて市川を見た。
「おまえ、……なんだよ、これ」
「……婚姻届け」
「んなの見れば分かるけど……なんで、おまえがこんなもん……」
「今朝、諒子と諒子のお兄ちゃんの要くんに頼んで市役所行ってもらってきた。
あたしと諒子が行ってもくれなそうだから、成人してる要くんにお願いしてもらってきてもらったの。
欠席の電話も、要くんにしてもらった。
あたしと諒子の分、2回も連続でかけたらバレるかと思ったけど……、案外平気だね」
そういえば、確かに市川の欠席の連絡の後すぐに電話がかかってきてたけど……。
あれが内田の欠席の連絡だったのか。
動転する頭。
今日の遅刻の理由が分かってほんの少しだけ安心する。
……でも、動揺は収まりそうもなかった。
婚姻届って……。
誰と誰のだよ……。
まさか―――……。
だけど、それ以外に考えられなくて、ますます冷静な判断なんてできなくなった時。
強い眼差しを向けたままの市川が言った。