甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「あんなにすぐ帰ってきちゃってよかったの?」
施設を出たところで聞くと、先生はキャップをかぶり直しながら頷いた。
「ああ。里子さんには会えたし」
「でも、会えなかった人もいっぱいいるでしょ? 妹分だとか弟分がいっぱいいるんでしょ?」
「休みだし、みんな出かけてんだろ。
いいんだよ。休みなのに遊びにも行かないで施設にいる方が心配だし。
何も言ってこないって事は、みんな元気なんだろ」
「……秋穂ちゃんも出かけたのかな」
そんな訳ないと思いながらも、わずかな期待を込めてそう呟く。
あんなタイミングでいなくなっちゃったって事は、きっと先生に言われた事を気にして、部屋に戻っちゃったって事だし……。
それを考えると、ちょっと後味が悪い。
「いや。秋穂は部屋に戻ったんだろ。気に入らない事があるとすぐ部屋に閉じこもる奴だから」
「……あたし、行かない方がよかったかな」
秋穂ちゃんの怯えたような表情が頭に浮かぶと、やきもちよりも申し訳なさが先行する。
好きな人にあんな事をあんな表情で言われたら……。
あたしだって泣きたくなるし。
落ち込んだ気分にため息をつくと、先生が顔を覗き込んでくる。