甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「……先生、泣いてる?」
「……泣いてない」
「でも、先生……」
「泣くわけねぇだろ、いい大人が」
「嘘っ、だって目に涙が……」
「―――ちょっと、黙れ」
少しだけ声を弾ませた市川を、伸ばした手で抱き寄せる。
そして、大人しく腕の中に収まった市川をぎゅっと抱き締めた。
力と、気持ちを込めて。
腕の中で、市川が泣いているのが分かって、俺の涙を誘う。
「ごめんな……。本当に、ごめん」
自分の声が掠れているのに気付いて、もうそれ以上何も言えなかった。
市川も俺を抱き締め返しながらも何も言わずに、静かに涙を流していた。
二人きりの部屋に、穏やかな時間が流れていた。