甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「……先生は、小さい頃からずっと一人で我慢してきたの?」
先生は困り顔で微笑みながらも、もう、誤魔化そうとはしなかった。
「我慢っていう意識はなかったけど……誰かに頼るくらいなら自分一人で抱えてる方が楽だと思ってた。
だって、面倒だろ?
言った後、変な情かけられた目で見られんのも……、自分の弱い部分を他人に晒すのも嫌だったし」
「……お母さんの事がトラウマになって?」
「いや。母親に置いていかれたのは、確かにトラウマにはなってるけど……だけど、母親と暮らすよりも、施設で育った方がずっと幸せだったのは当時から分かってたから。
酒浸りで、俺に暴言ばっか浴びせるような奴だったから。
あの状態のまま育てられる事のが、俺にとっては不幸だった」
「……やっぱり許せない」
先生はあたしの怒った顔を見て目を細めた後、話を続けた。
「施設で育って……特別大事だって思う奴もいなかったし、誰かを失う事を怖いとは思わなかった。
きっとどこかで線を引いてたんだろうけどな。
家族みたいに思ってながらも、気持ち全部は許す気にならなかった。
……里子さんにも」