甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「けど、市川に会って、付き合うようになって……。
初めて怖く思った。
いつか市川も俺から離れていくんじゃないかって。
それと同時に、自分の中に生まれた感情にも怖くなった」
続けられた話の内容が、あたしの事に移った。
落としていた視線を上げると、白く明るい蛍光灯の下で、先生はどこか遠くを見つめていた。
「独占欲だとか嫉妬だとか……。
そんな言葉じゃ抑えらんねぇくらいの感情に気付いて、そこからおかしくなったんだろうな。
市川の小さな行動に不安が掻き立てられるようになって、他の男との接触が、許せなくなった。
市川に言い寄る男がみんな、俺から市川を離そうとしているように見えて……狂いそうだった」
そこまで言った先生は、つらそうに表情を歪ませる。
重ねていた手を、先生がギュッと握るから、あたしも先生の手を握り返した。