甘い魔法②―先生とあたしの恋―
「んな顔すんなって」
頭をキャップの上から少し強めに撫でられて、先生を見上げる。
あたしと目を合わせた先生は、安心させるように優しく微笑んだ。
「あいつの『好き』は恋愛感情じゃねぇよ。
ただ兄貴離れができないだけ。ブラコンって言ったのも嘘じゃないし」
秋穂ちゃんに向けた表情とは、別人みたいに優しい顔。
あたしがやきもちを焼いて落ち込んだと思った先生は、それを取り除こうとしてくれてるんだろうけど……。
秋穂ちゃんのあんな態度は、本当にいつもの事なのかな……。
先生は、あの事をなんとも思ってないのかな。
「そうなのかな……」
それだけ返してから、また一つため息をついた。
秋穂ちゃんに言われた言葉が、頭から離れようとしない。
『あなたなんかに、ハルくんの事が分かるハズない』
それは、あまりに的確にあたしの胸の中心をついていたから。
先生とは生い立ちが違うあたしがいくら考えたって、先生の気持ちは分からない。
先生が何かのきっかけで落ち込んで、支えが必要になった時……あたしが支えになってあげられるか、自信がない。
あたしは先生に何度も救われたのに―――……。
秋穂ちゃんの強い眼差しばかりが頭に浮かんで、あたしを責めてるみたいだった。